佑耶君て言うのは、サッカー部の爽やか少年。
顔も優しげで結構モテる。

見た目で人を差別しないから、男子にも女子にも反感を買うことがない。


まあそんな人に彼女がいないと思ったあたしが馬鹿だったんだけど。

告白しようとか思ったわけじゃなくて、ただ遠くから見ていたかった。


麗奈に言わせれば『そんだけの思い』なんだけど。

あたしに言わせれば大きい。


なんかうまくいかないもんだなー、なんて思って屋上の扉をあけた。

ウチの高校の屋上は通常は閉まっているけれど、ほとんどの生徒が合鍵を持っている。

だから先客がいるときは屋上の扉は普通に開いちゃうんだけど。


「……人、いるんだ」

抵抗なくスムーズに開いた扉に、
なんとなく一人になりたかったあたしか、ちょっとだけがっかりした思いがあった。


けれどここまでして、引き返すことはできない。

しょうがないから屋上に出る。

もしかしたら向こうはもうすぐ出ていくかもしれないし。