「…先輩」
「……」
「九条先輩?」
「……」
また、上の空か。
小さな曇り空が少しだけ気分を下げる屋上で、あたしは溜息を零す。
あたしが取り巻きの先輩に呼び出しをくらったあの日以来だと思う。
九条先輩は上の空の時が多くなって、前みたいにペラペラ、ヘラヘラしていなくなった。
ただボーッとして、考え込むような表情。
それから。
「九条先輩!」
「っ!は、はい!!」
あたしが制服の裾を少し引っ張って呼んでやると、たちまちビクッとして返事が返ってきた。
そしてすぐさまあたしから離れる。
そんな焦った表情ばかり、見ている気がする。