「別に、なに?」

思ってることを促す口調に、ぐっと詰まりながらも。

先輩の表情が本当に分かってない様子だったから。


「──…、ま、守ってあげるなんて、言われたことなくて…」

「、へ?」

「だから恥ずかしくなったっていうか…!照れたっていうか……」

ゴニョゴニョと言葉を濁すあたしをじっと見つめてはいるのを感じるのに、先輩は何もしゃべらなくなった。


だけどあたしも、俯いたままじゃ顔を見られない。


小さな風があたしの頬をかすめる間、あたし達は沈黙だった。


「ちょっと、俺まで恥ずかしくなっちゃったんだけど」

ボソッとそんな先輩の声が沈黙を破る。

ゆっくりと目だけ上に向けると、先輩は両手でその小さな顔を覆っていた。


隙間から見える耳が、赤い。


「…そんな可愛い目、ダメ」

「なっ」

可愛いとか!