ヤバい
そう思いながら目をギュッとつむって。
殴られると覚悟して歯を食いしばる。
怖すぎっ…――!!
「ストップストップ―」
頬に達する直前で、先輩の手が止まったのを感じた。
それを止めたローテンポの声。
聞き覚えのあるその声に、恐る恐る顔を上げる。
―…まだ、いたんだ。
「その子、俺の話し相手なのー。手出したら怒るよ?」
屋上の扉上から、九条先輩が言った。
顔は笑ってるのに、目だけ鋭くて冷たい。
いつもヘラヘラと笑っている先輩には珍しくて、少しだけ驚いた。
「じゃ、もう行ってくれるかな」
「え、あの…
「邪魔」
あたしはあまりよく知らなかったけれど、
九条先輩のこんな表情はきっと滅多にない。
それだけに、さっきまで強気で叩きそうだった先輩達は凍りついた表情でバタバタとと出ていく。