私の檻である小さな家が見えた時、思わず息を呑んだ。
家の前に……彼が立っていた。
黒い瞳を微かに揺らして、悲しそうに空を飛ぶ小鳥達を見つめている。
……総助様。
ギュッと拳を握り締め、ゆっくりと彼へと向かって歩いて行った。
「…… 総助様」
小さく名を呼んで彼を真っ直ぐに見つめると、私の姿を捉えた彼の漆黒の瞳が大きく見開かれる。
「……なぜ……何故……戻ってきた」
彼のその問い掛けに、涙を流したまま笑みを返す。
「……私には行く所などありませんでした。この世界の……何処にも。私の居場所は貴方のお傍だ……」
言葉を言い終わる前に腕を引き寄せられ、彼がギュッと強く私を抱き締める。
「…… お前は馬鹿だ。……どんな思いで……俺がお前を逃がしたと……」
そう言って彼は肩を震わせ、息もできないほど強く私を抱き締める。
…… やはり、起きていたのですね。
彼に気付かれずに部屋を出る事など不可能だと思っていた。
彼はわざと私を逃がそうとした。
…… その手で殺してしまう前に。