「……総助様」

自由になった世界で、私の心を惹くモノは彼だけだった。

「……そう……すけ……様……」

胸に刻まれた愛の証が、何かを訴える様に酷く痛んだ。

ギュッと強く胸を押さえたまま……愛しい彼の名を呼び続ける。

……私には彼しかいない。

残酷で非情で鬼神の様に強く、でも……本当は誰よりも一人を怖がる悲しい人。

気が付くと元来た道を走っていた。

……彼の元へ。

呼吸が荒くなり、足が縺れ幾度も転ぶが、決して止まらない。

……殺されてもいい。

……あの人になら。

次第に昇って行く日の光に照らされながら、愛しい彼の元へと走り続けた。