「征一。修二も聞いてくれ。
おれはおまえ達に『命令』をしてきた覚えはないんだ。

時には母さんと相談して、おまえ達にとって良かれと思う事を言ってきただけなんだ。

まさかおまえ達が、おれの言葉を命令と受け取り、服従していたとは思わなかった…

麗子さんとの縁談も、命令ではなかったんだぞ。

いつまで経っても恋人ひとり出来ないおまえのために、良い伴侶を探してやっただけなのだ。

今にして思えば、おまえ達が自分の意見を言わない事が不思議だった。同時に残念でもあった。

だから、征一が内部監査室への配属を申し出た時、おれは嬉しかったんだ。征一の意見を初めて聞いた気がしたからな。

そして裕子さんの話も嬉しかったぞ。ようやく好きな女性に出会えたんだろ?」