「征一、おまえは思い違いをしている」

「父さん、分かってくれないのですか…?」

「おれは愛人を囲ったりはしない。なあ、母さん?」

「え? そうなの?」

「なんだよ、母さんまで…」

「うふふ」

思わず笑っちゃったけど、それは私だけだった。
いまのは、笑うところじゃないの?

征一さんも修二さんも唖然としている。
麗子さんは、相変わらず無表情。この人に感情はないのかしら?

「おれは息子の育て方を間違えたようだ」

沈痛とも取れそうな、お父様の低い呟きだった。