「いつ？」

「えっと、月曜日。匠と香織ちゃんは大学の友達で、それで分かったの」

「そうか、俺も隠していて、すまない」

「隠してたの？」

「と言うか、黙ってただけだけどな。
俺は子供の頃から、周りから『金持ちの息子』という目でしか見てもらえなかった。

誰も『素』の俺を見てくれなかったんだ。
だから俺には親友がいない。親友どころか、友達さえいないんだ。

女も同じだった。玉の輿を狙い、色目を使う女ばかりだった。
だから俺は、女を好きになった事がない。

俺は会社に入ってから、プライベートな話はしない事にした。
そのせいで、ますます友達が出来なかったが、変な目で見られるよりはマシだった。