「どうした?」

「………」

征一さんは側に来て、優しく頭を撫でてくれた。

「嬉しいのか?」

私は小さく首を振った。

「じゃあ、悲しいのか?」

コクっと頷いた。

「何がそんなに悲しいんだ?」

「私…征一さんに、嫌われたくない」

「馬鹿だな、おれがおまえを嫌いになるわけないだろ?」

「ほんと?」

「おお。さあ、顔を上げて?」

征一さんに上を向かされた。

「ふ、酷い顔だな」

「ひどい…」

「話してごらん」

「私は、征一さんが好きなの」

「知ってる」

「ううん、違うの。私は征一さんがお金持ちでも、貧乏でも、そんな事は関係なく好きなの」

「裕子。おまえ、もしかして…」

「征一さんが、神崎財閥の御曹子って事、知っちゃったの」