その後は特に何事もなく、日々が過ぎて行った。

征一さんの婚約者の事とか、経理部の横領とか、気になる事はあるけど、考えないようにして、淡々と仕事をこなしていた。

時々、五十嵐課長や水野君からの視線を感じる事はあったけど、私が意識しすぎなんだと思う。

帰りは毎日、恵美ちゃんと帰った。と言っても駅までとかで、その後恵美ちゃんは進藤さんとデート、というパターンが多かった。

『いいなあ…』

征一さんとは、時々メールでやり取りするだけ。
会おうとは言ってくれないし、いつも忙しいみたいで、私から言い出す事も出来ずにいた。

『もしかすると私、避けられてる?』

そんな弱気な考えまで浮かんじゃう。

それを恵美ちゃんに話したら、はっぱをかけられた。積極的になれと。

だから、というわけじゃないけど、今日は勇気を出すんだ。花の金曜日に、暗い気持ちでいたくないから。