「そんなこと、ないもん」

「ちゃんと『好き』って言われてねえんだろ?」

「そうだけど…」

「姉貴はアイツに愛人として囲われるのが、せいぜいだと思う。
俺はそんな姉貴、見たくねえんだよ!」

「征一さんはそんな人じゃない!」

「姉貴は分かってねえよ。アイツは女たらしなんだぞ」

「え?」

「香織から聞いたんだが、先週の日曜、家に女を連れ込んでたんだ」

「あ!」

「それも香織より若そうな、まだ子供みたいな女だったらしい」

「ひどい」

「ああ、ひどいだろ? 香織はその女の下着を買わされたって、プリプリしてた」

『あちゃ…』

「アイツは変態野郎なんだ。だから…」

「あの………それ、私なの」

「ん? え〜? 何やってんだよ、姉貴!」

「ごめんなさい…」

「もう、戻れないところまで行っちまったのかよ?」

「多少の誤解はあるみたいだけど…、戻れないのは確か。と言うか、戻りたくない」

「適わなくてもか?」

「その時はすっぱり諦める。愛人とか、私には無理だから」

「そっか。姉貴が男に熱上げんの、初めてだもんな?」

「うん、今更って感じだけど、私の初恋なんだ…」

「じゃあ、頑張ってみろよ。もし姉貴が泣く事になったら、俺が奴を叩きのめす」

「出来るの? あの人、強そうだよ」

「武器を使えば、なんとか…」

「あはは」