『なぁ…俺にしとけよ…』



あたしを抱きしめる力はどんどん増していくのに、



不思議と全然苦しくなくて、むしろ優しくて心地よくて……。



『俺なら絶対に月美をそんな暗い顔にさせねぇから…』



微かに震える声で、搾り出すようにして、



何度も何度も隆司はあたしにささやくように言った。



『好きだから…俺、月美が好きたから。俺はお前しか見ない…悲しい気持ちにはさせねぇ…。だから俺にしとけ…』



空人には絶対に求めてはいけない感情。



あたしが封印している思い。



隆司ならきっと、そんな苦しさから解放してくれるんだろうね。



それがはっきりと、そしてしっかりと伝わってきて、



あたしはこの時だけは、空人のことを掻き消して、



隆司の優しさに甘えそうになっていた。