「ねぇ、真鈴」
僕は真鈴の隣に座り、僕らはソファに並ぶ形になった。
「何?」
真鈴が僕の方へ顔を向ける。その顔には、全く疲れ等を感じさせない。こんな状況下にいて、本当にタフな子だなと思った。
「貴田先生は……どうやって切り抜けたの?」
「あぁ……」
そこでつかの間の沈黙が訪れる。真鈴は電気もないこの部屋の、暗い天井の隅に言葉を探す。
「簡単よ」
「えっ?」
「私が、貴田先生の味方だと思わせたの」
どういうことだ?
「つまりね」真鈴が僕の方へ体ごと向く。「私はあの時何も知らずに、ただ祐希くんとデートしていた。そこに貴田先生が現れた。すると、いきなり祐希くんは逆方向へ走り出した。私には訳が判らない。私は貴田先生にそれを伝える。貴田先生は祐希くんに渡したいものがあると言う。そのために探してるから、もし見付けたら教えてほしいって。私は祐希くんを見付けたら、必ず先生に伝えますと言う」真鈴はそこで一息つく。「……以上」
なるほど。さすが、真鈴は僕と違って頭が回る。でもその対応だと……。