遊園地の隅から隅まで、僕たちは歩いてみたけれど真鈴の姿は無かった。まだ彼女は来ていないようだ。そして正直、僕は歩き疲れてしまった。もう空は茜色に染まり始めている。
「あのさ、二人は疲れてない?」
優等生も食いしん坊も僕を見て首を振る。そして口を開く。
「でも僕たちには時間が来たので」
「俺たちには時間が来たから」
「帰ります」
「帰るな」
さっきまで頑なに帰ることを拒んでいたから、僕は驚いた。意外とあっさりだな。
「そうか。判ったよ。ここまで本当にありがとう。気をつけて帰りなよ」
すると、二人は右手をぎゅっと握り、親指だけを突き出して僕に向けた。
「頑張ってください」
「頑張れよな」
僕は二人の名前も知らぬまま、茜空の遊園地に一人残った。