「帰らなくていいの?」
「親はどこにいるの?」
僕は何度か、そんな風に二人へ問い掛けてみたけれど彼らは全く答えてくれなかった。
そして観覧車はもう目の前まで来ていた。一時間は歩いただろうか。僕の予想通り、太陽は傾き始めていた。
角を曲がると中山遊園地の正門が目に入った。が、人の気配は全くない。客がいないだけじゃなく、スタッフすらいないようだ。
「着きました」
「着いたぜ」
「……もしかして、潰れてる?」
二人はお馴染みの顔を向き合わせる動作をして、「はい、言いませんでしたか?」「おう、言わなかったか?」と言った。
「聞いてない」
確かにそんな話は聞いてないはずだ。いくら僕の記憶が曖昧だろうと。まぁ、でもそれはどっちでもいい。真鈴が中山遊園地と言ったのは間違いないし、今僕が真鈴に会う為にはここに来るしかないんだ。
一応、ぐるりと周りを見回してみたけれど真鈴の姿はなかった。
「中に入りますか?」
「中に入るか?」
「入れるの?」
優等生と食いしん坊はニヤリと笑い、正門から左側へと歩き出した。