貴田先生は僕らから約20メートル先の角から現れた、真っ直ぐこっちへと向かって来ている。
「真鈴……」
僕は思わず弱々しい声を零した。
「判ってる」
真鈴は貴田先生をじっと睨んだまま、頭の中で何か策を練っているようだった。
貴田先生がだんだんと近付いてくる。その顔は怪しげな笑みで溢れていた。僕らは立ち止まる。
「祐希くん」真鈴は前を見たまま、「中山遊園地」と言った。
「えっ?」
中山遊園地? なんだ、それ。
「せーの、で走って」
「えっ?」どこに? 真鈴はどうする?
「せーの!」
真鈴の合図で、僕は真鈴の手を離し真後ろへと一気に走り出した。