暗闇だった。真っ暗な家の中を歩き回っているうちに、その闇に目は慣れてきていたけれど、それでもこの部屋に拡がる暗闇は、また別物に感じられた。
何も見えない。いや、きっと見たくないんだ。僕にはそこにいる人が判っているから。そこにある物が判っているから。
ゆっくりと、部屋の中心へと歩み寄るなんともいえない、キツイ臭いが僕の鼻をつく。ふいに、僕の体に何かが触れる。
あった。やっぱり、そうなんだ。
母さんは死んでいた。自殺だった。