太陽の下、僕の目に映るふたつの家は何の異変もないように見えた。だけどそれは外見的なことで、そこに漂う空気はなんとなく気持ち悪かった。先入観なんかじゃない。僕は出来るならば、扉を開きたくはなかった。もうそこにある現実は変えられないだろう。僕を喜ばせようとする物事なんて、用意されているわけがない。
真鈴がいる角の方へ目をやる。受け入れなければ始まらない。奏の家を横目に見ながら、僕は僕の家の扉を開いた。