僕はこれまでにオウムの存在は知っていたし、何かの番組で「ご飯! ご飯!」と言っている(もしくは、そう聞こえる)猫を見たこともある。
「やあ」
だけどペンギンはどうだろう?
「やあ」
彼は(彼女かもしれない)僕の目の前へ来ると、二度続けて「やあ」と言ってきた。
「やあ」
三度目。僕はなんとなく、周りを気にして辺りを見回してみたのだが、誰ひとりいなかった。平日のこんな時間に、しかも日差しの強い日にわざわざ外へ出る奴などなかなかいないのだ。
「何か探しているのですか?」
僕は目線をペンギンへと戻した。今度ははっきりと話した。「やあ」までなら、人間以外でも話せそうだし僕らが日頃使う意味の「やあ」とは違って、ただ鳴き声が「やあ」音としての「やあ」ならペンギンにだって発し得る、そういう結論に至った矢先の「何か探しているのですか?」だった。
「やあ」
僕は試しに質問には答えず、挨拶を返してみた。
「やあ」
やっぱり、ペンギンはそう答えた。もうこうなったら、相手がペンギンだということにこだわりすぎてはいけないだろう。
「はじめまして」
「はじめまして」
答えたペンギンの声は心なしか、少しだけ明るくなった感じがした。