カウンター席が2つと、3つのテーブル。僕らが店内に入るとカランコロン、とベルの軽快な音がした。が、誰もいない。他の客はともかく、店員も見当たらない。
「やってるのかなぁ?」
僕は彼女に尋ねる。
「やってるわよ、きっと。とりあえず座りましょう」
彼女が言うままに、テーブルの方へと二人で着席した。
静かな時間。沈黙。古びたテーブルは真っ直ぐにはたたなくて、少し体重をかけるとそちらの方へすぐに傾いた。
彼女はじっと僕を見ていた。詳しい話を聞くんだ。もう、名前を思い出そうなんてこともしなくなっていた。
「おや? 誰か来てるのかい?」
その時、店の奥から声が聞こえた。