結論から言うと、その日僕は水族館にはたどり着けなかった。
家を出て、夏のにおいがする道のりをゆっくりと歩いた。ただし、そのにおいは今まさに旬というものではなく、8月も終わりに近かったので夏の残り香とでも言った方が表現的には近いかもしれない。それでもまだ日差しは強く、僕はじわりと汗をかきながら歩いた。
20分ほど歩いたところで前方から何かがこっちへ向かってくるのに気付いた。誰か、ではなく何か。それは我々人間とはまた違った形をしていた。最初、僕はそれを誰かが操る大型の(そして新型の)ラジコンか何かだと思った。人間のようにスムーズに前へ前へと進むのではなく、右足が出ては止まり、左足が出ては止まり、また右足が出て……といった具合にまさしく機械的な進みかたをしていたからだ。もちろん、その時点ではまだ足が(もしくは足的なものが)あるのかさえも判らなかった。
その謎の物体(または生物)に対して、不思議と恐怖や嫌な気持ちは感じなかった。だから僕は、それが近付いてくるのを待った。ガードレールに腰掛け、煙草に火を付けゆっくりと吸い切る間に、やっとはっきりとした形が見えた。
ペンギンだった。
家を出て、夏のにおいがする道のりをゆっくりと歩いた。ただし、そのにおいは今まさに旬というものではなく、8月も終わりに近かったので夏の残り香とでも言った方が表現的には近いかもしれない。それでもまだ日差しは強く、僕はじわりと汗をかきながら歩いた。
20分ほど歩いたところで前方から何かがこっちへ向かってくるのに気付いた。誰か、ではなく何か。それは我々人間とはまた違った形をしていた。最初、僕はそれを誰かが操る大型の(そして新型の)ラジコンか何かだと思った。人間のようにスムーズに前へ前へと進むのではなく、右足が出ては止まり、左足が出ては止まり、また右足が出て……といった具合にまさしく機械的な進みかたをしていたからだ。もちろん、その時点ではまだ足が(もしくは足的なものが)あるのかさえも判らなかった。
その謎の物体(または生物)に対して、不思議と恐怖や嫌な気持ちは感じなかった。だから僕は、それが近付いてくるのを待った。ガードレールに腰掛け、煙草に火を付けゆっくりと吸い切る間に、やっとはっきりとした形が見えた。
ペンギンだった。