「これが新曲? 谷口くん、成長したんじゃない?」
僕にはさっぱり意味が判らなかった。彼女がこの曲を初めて聞いたらしいのは判る。誰かの新曲だと言う。だけどそれで、なんで僕が成長するんだろう?
「次はいつライブしてくれるの?」
僕は固まった。どこかで聞いたことのあるような、あの声は僕の声だったんだ。すると不思議なことに、聞き覚えのほとんど無かったあのメロディが、一気に馴染みあるものに変わる。
ひとつの鍵がカチッと綺麗にハマったような感じがした。
「そうだよ! 僕の歌なんだ!」
気付けばそう叫んでいた。