「さっき言った通り、今日は水川先生がお休みなの。それで、私が呼ばれたってわけ」
呼ばれた? なぜ? 僕の思考能力が欠落しているのか、彼女の説明が足りないのかいまいち判らなかった。もどかしい。
「あっ、私の説明めちゃめちゃだよね。ごめんね。私はタカダと申します」
はにかみながら、急に丁寧な言葉遣いに変わった。僕はどこからかまた、痛みを感じる。
「私もね、水川先生と同じく、ここの保健室の先生だったのよ。でも去年、辞めちゃったの。谷口くんが入学する前の年だね。それで、水川先生とは今でも仲良しで時々飲みに行ったりするんだけど、昨日飲み過ぎちゃったのよね、あの人。あ、余計なことまで話しちゃった。やば」
舌をペロッと出し、バツの悪い顔をする。
「まぁ、私のせいで飲み過ぎちゃったところあったから……だからお詫びに今日一日交代で保健室の先生なんだ。ねぇ、この話、誰にも秘密にしてね」
唇に人差し指を当てて片目を閉じる。表現が豊かな人だなぁ、と思った。僕は強く、はっきりと頷いた。