目を開けると、僕は真っ白な気持ちだった。これは比喩でもなんでもなく、本当に真っ白だった。天井に小さな穴がたくさん開いている。ほのかなアンモニアの臭い。僕の上に置かれている薄っぺらいけれど温かいブランケット。体を起こすと、頭の奥に鈍い痛みが走った。僕は思わず目をつぶる。
「あ、起きた?」
誰かの声がして、そっちへ目をやると女の人が立っていた。
「大丈夫?」
綺麗な人だった。年は20代半ば、肌が白く、そのために真っ黒で短い髪が引き立っていた。彼女はなんてことのない、Tシャツにジーパンという格好をしていた。僕は思わず見とれ、何も言えなかった。
「ん? どうしたの? まだどこか痛む?」
本当は頭が酷く痛んだが、僕はゆっくりと首を左右に振った。
「そか。ならよかった」
彼女はにっこりと笑った。