ペンギンの言う通りだった。僕たちには、もう過去の(この仕事を始めるまでの)記憶は一切、無い。小さい頃の写真や、両親のことさえ覚えてはいない。これは規則で、切り離されることになっているからだ。過去に未練のある者に、記憶を操る仕事はさせれない。その代わり、支給される給料は半端じゃないし、一般のサラリーマンなら何度人生があっても稼げないほどの額になる。
過去を捨てる。そして輝かしい未来を得る。これが僕たちのルールだ。それに何より、この仕事を出来る者はとてつもなく限られている。選ばれた者にしか無いこの能力を、使わずに仕舞っておくことが何よりの罪なのだ。
そんな様々な葛藤を抱えながら、僕たちは仕事を始めた。そして今も続けている。