「でも、今日のように間違った記憶が注入されてしまうことが稀にだけど、ある。記憶のストック内で、記憶と記憶がぶつかり、有り得ない記憶が生まれる。天下統一を目論む、スケートが趣味の将軍なんて、そんな記憶はあるはずないのだから。それを誤作動と読んでいる。この仕事をしながら、あなたたちは毎日ハラハラしている。自分たちの誰かが誤作動を注入してしまい、新聞に載るような事件を起こしていたりはしないかと。この能力が明るみに出るようなことがあっては、非常に困りますからね。まず認められはしないでしょう。それに、あなたたちはこの仕事の為に大いなる犠牲を払った」
大いなる犠牲。その表現はまさしく的を獲ていた。そう、僕たち選ばれた人間は、こういった能力を使って食べていく代わりに、その能力を使っていくと決めたからには捨てなければいけない物があった。それは…。