ベランダから空を見た。大きく青い空は、どこまでも続いている。
「谷口祐希」
声がした。懐かしい声。でも、奏ではない。僕は声のした方を見下ろす。
「探し物なら、手伝うわよ」
女の子は、あの頃のままの姿でにっこりと笑った。
「真鈴」
あぁ、君がいたなら百人力だな。それに、僕は君に恩返ししたいんだ。まずは誕生日を祝わないか? いつなんて判らないけれど、言いたいんだよ。生まれて来て、ありがとうって。