「ここにあなたを送り込んだのは、私。その時の姿が今のこの姿。だからこうする必要があったの」
奏の大きく輝いた瞳は、ペンギンになろうとも変わらなかった。僕を送り込んだ? 何の為に?
「私たちは、記憶を操ることが出来る選ばれし人間。でもそのせいで、大切ななにもかもを失ってしまった」
奏はそこで、少し躊躇いながら俯いた。僕は長く、壮大な夢を見ているような気分だった。
「あなたは、前にもこうしてペンギンと話したことがある。いえ、この時間を軸にするなら未来にも、だけど」
ペンギンと……こうして……話した……?
その瞬間、僕の中の全てが開かれた。脳の奥から隅々の毛穴までもが、一気に広がっていくような開放感。
目の前にいたのは、猫でもペンギンでもない。紛れも無く、僕の大切な妻だった。