「あなたたちの仕事は何ですか？」
ミネラルウォーターで口の中が潤ったのだろうか、さっきよりも円滑な喋りでペンギンはそう言った。僕たち夫婦はまたもや目を合わせた。つまり、このペンギンは僕たちの仕事を知っているのだ。それが秘密を知っているという発言に繋がることは、一瞬で判った。
だけど、何故だ？　今日僕は何回目になるかも判らないクエスチョンマークを頭に浮かべた。何故ペンギンが僕たちの仕事のことを知っている？
「話したくないのならいいんですが、どちらにしろ私はあなたたちの仕事のことを知っています」
ペンギンはまた俯いた。僕たちの言葉を待っているようだったが、何を言っていいのか全く判らなかった。僕は妻を見た。妻も僕を見た。やはりここは男として、僕から何か言うべきなのだろうか。いや、このペンギンはメスだ。女性同士、何か通じるものがあるのかもしれない。
そんな僕の気持ちを察したわけではないだろうが、ペンギンに話し掛けたのは妻の方だった。
「じゃあペンギンさん、話してみて。その、私たちの秘密の仕事ってやつを」
妻は強い口調でそう言った。ペンギンは顔を上げ、また真っ直ぐに前を見据えた。
「いいですよ。あなたたちの仕事は」
その時、電話が鳴り響いた。