もういい! もういいよ! 記憶の交換なんて今はしない!
僕が強くそう思うと、紙切れはひとつにまとまり消えた。そして僕を包んでいた光はゆっくりと、右手へと吸い込まれていった。
それからしばしの静寂。真っ暗闇の中、たった今起こった出来事を思い返す。リアルな夢を見ていて目覚めた直後のような気分だった。本当と幻想の区別がつかない。でも体のどこかに痛みなんてなかったし、疲れも感じなかった。
「何が……起こったの?」
真鈴の声が闇の中から聞こえた。強い光にさらされた目はなかなか暗闇に慣れない。
「身についたんだ」
「えっ?」
「真鈴の言ってた、僕の能力が」