僕は僕の歌を唄い始めた。それは呆れるほど簡単な、何のひねりもないメロディだった。僕が初めて作った歌。
真鈴も子猫も、じっと僕を見ていた。僕はまた、ステージに上がっているんだ。
その歌は短い。あっという間に、僕はまたただの男に戻る。真鈴が小さな拍手をくれた。僕は笑顔を返す。「いい歌だったよ」「ありがとう」
そして僕は子猫の方へ顔を向ける。すると子猫は、なんだか不服そうな顔をしていた。そして何故か、僕にはその気持ちまでもがはっきりと見えた。
「その歌じゃない」
子猫は僕に、そう言っているんだ。