後で知った事実が


ちょうど彼女が俺に手を伸ばした時

俺の心臓は止まったらしい







天使は死者を迎えに行くと
聞いたことがある






なら彼女はなぜ俺を連れて行かなかった?



そう思った時、彼女のあの言葉が頭を過った







『まだ………』





「まだ俺を連れて行けねぇ

ってことか」



遠回しに生きろって言ってるんだな






それは桜の咲く

春のことでした





そんな過去の事を思い出した今


彼女の声を思い出せた




艶があって優しげな声

聴いていて心地よい






今、やっと


そんな声の持ち主の彼女に会えた




「ねぇ、また俺に

天使さんの声聴かせて?」




嫌だとそっぽ向いて
また俺を連れていくのをやめるか



生きなさいと言って
微笑んでくれるか



天使さんはどっちを選ぶ?












『私が貴方を連れていくのは
まだまだよ

次会うとき、貴方は
おじいちゃんになっているかも
しれないわね』




彼女は悪戯っぽく笑い

そのまま帰ってしまった







次会うのは何十年後だろうか…



俺はまた生かされた












貴方のその綺麗な手と
俺のこの手を繋げるのは



そう近くないお話







君に出会えて

俺は幸せだよ






これからは君のその手を

絶対離さないからね







終わり。