気づいたら、彼の拳が私の顔にくいこんでいた。

戦闘後一瞬気が抜けていた私の身体は、思った以上にすっ飛んでいった。
 
痛みより、ものすごい重さが伝わってきた。

「なぜ殺した! 鞠子に、鞠子にやっと会えたのに! なぜ殺した! どうして! どうして!?」

倒れた私に透はのしかかり、胸ぐらをつかんで、何度も叫んだ。

何度も殴った。

仲間が止めようと透を抑えつけるが、興奮した彼を誰も抑えきれない。

私の顔に透の涙が、ぽたりぽたりとおちてきた。

温かかった。
 

「なんで助けた・・・・・・なんで俺を助けた・・・・・・やっと鞠子に会えたのに・・・・・・、あんな姿でも嬉しかったのに・・・・・・」


私は、

父だったものを殺し

母だったものを殺し

友人だったものを殺し

それでも世界は壊れずにいた
 
透がいたから、世界は壊れずにいた。
 

彼は、私に覆いかぶさって吠えるように泣いた。


それは、世界が、私の世界が壊れていく音でもあった。

【END】