千代子が指をぱちんと鳴らすと、おとなしく置かれていたティースプーンが、くきっと折れ曲った。


「うわ、すっげ」

「全然! 何の役に立つって言うの、履歴書にも書けない」

「履歴書には特技書けるよ」

「悠くんが人事担当者なら、珠算検定2級と特技スプーン曲げ、どっちを採用する?」

「珠算検定2級」

「でしょ?」

「確かに。でも、何かしらの役には立つんじゃないの?」

「合コンで女子が余興だって、がんがんスプーン曲げたらどうする?」

「ひく。てか、やったの?」

「そうなの! 調子に乗って店中のスプーン曲げちゃって、スプーン集めて東京タワー! って。したら、狙ってた福山似、目もあわせないの!」

「・・・・・・俺もあわせない」

「でしょ。だからね、悠くんとつきあい始めた時も、コレのこというと嫌われるかなって、怖かったの。世界の平和を守れるほどのビーム出す! とかならまだマシなんだけど」


ビームで世界平和が守れるのかどうかはともかく、秘密の告白を終えた千代子は、少し不安そうだった。

でも、超能力はどうあれ目の前の千代子の愛らしさには、一分の変わりもない。


庭園から流れる現地の音楽が、ようやく僕らを新婚初夜っぽいムードにしてくれた。