カーテンから差し込むオレンジ色の光が、狭い部屋を支配する。


身体が重い。
でもお腹空いたな。


床にあったカップラーメンを拾い、お湯をつぐために一階に下りる。


誰もいない。真っ暗なリビング。
一階には光もない。
かろうじて二階の自分の部屋だけが、私の居場所。


カップラーメンにポットの湯を入れて、冷蔵庫のなかにあるキムチとマヨネーズを入れる。
意外に美味しいんだ。


戸棚を開けると、私が好きなカップラーメンがストックしてある。


あの人はこうして、いつも私に何かを訴える。


テーブルの上の夕飯。温めて食べてね。母より。
そんな、テレビドラマでよくある、ありきたりなことを決してしないのは作ってもカップラーメンに負けることをあの人は知っているからかもしれない。


負けることを分かりながら、あえてカップラーメンを置くのは唯一、私が親子であることを認めざるを得ない瞬間だ。


口に箸、両手に飲み物とカップラーメン。
あとはポケットに棚のカップラーメンを詰め込めるだけ詰め込んで、居場所に戻った。