海斗とは私の亡くなってしまったお兄ちゃんのこと。

夏生まれのお兄ちゃんは、名前の通り海がすきで
泳ぐのも上手だったっけ。


そんなお兄ちゃんを、私は―……




「花音」



静かに私の名前を呼んだ一誠の声で我に返る。


「あれは、あの事故は、花音のせいで起きたんじゃない。仕方なかったんだ。いつまでもお前一人が責任を感じる必要はないんだよ?」


悲しそうに、でも強く一誠は言う。



―わかってるんだよ……





あの事件がどうしようもなくして起きた事件だってことも、
私がどうすることも出来なかったことも。

それでも、


お兄ちゃんが目の前で死んでゆくのを、ただ見てることしか出来なかったのが
悔しくて、悔しくて。





あれは今から8年前の夏。