「はぁ~……」


本日六度目のため息。

おぼんを腕に抱えて、壁によりすがって
今はお客さんが来るのを待っている。

開店して今……一時間くらい経ったけど、まだ一人もお客さんは来ていない。

初バイトってことで、それなりに緊張はしてたけど
この調子だったら人が苦手な私もがんばれそうだ。


「おい、花音。不景気なため息つくなよ」


声をした方を見ると、一誠が呆れたように立っていた。


「だって、仕方ないじゃん」


自然と口からでちゃうんだもん。

たぶん、さっきの遥の言葉が胸に残ってて……



[俺に惚れんなよ?]



遥は当たり前のことを言っただけ。

幽霊のことを好きになっても、きっと後悔する。

だって叶わない恋だから。

てか、好きになるとかありえないし。

ちょっと自意識過剰なんじゃない?!

そう考えたら、少しムカついてきた……




でも――

なんで私、こんなにも悲しい気持ちになってるの?