―なんか、落ち着くなぁ。


ここに来てから最初に話して以来、何も会話をしていなかった。

普通だったらこおゆう沈黙は嫌いだけど、遥とのこの時間は逆に落ち着く。


―ほんと、不思議だ……


心の中で呟いて、なんとなく遥の横顔を見る。


―やっぱり、きれいな顔……


肌にかかる長めの黒髪が余計に彼の顔の白さを引き立てていた。

ふいに吹いた小さな風で、髪の毛先が軽く揺れる。

それでも、遥の髪は揺れていなかった。

やっぱり……

幽霊なんだ……。





「ん……花音?」

「へっ?」


声にびっくりして我に返ると、思いがけず遥の顔が近くにあって


「ぅひゃっ」


と、後ろに退いた。


「ぅわ~……何、そのはんのー。花音からきたのにぃ」

「うそっ、私そんなことしてたの?」


遥に見入って、いつの間にかそばまで近づいてしまったようで……


「あぁ~、傷ついた。花音のせいで俺のガラスのハートが粉々だし」