「おはよ~」


リビングのドアをがちゃっと開けるとすぐに、由紀恵と目があった。


「あら、おはよう。今日は早いのねぇ」


由紀恵はびっくりしたように言ってから、くすくすと笑って


「はじめてのバイトが緊張して眠れなかった?」


と、冗談っぽく訊いてきた。


「うーん……それもある」


実際、昨日の夜からずっと緊張してる。

うまく出来るかな、笑えるかな?って。


「まぁ、そんなに力まずにやりなさいね」


優しい笑顔でそう言うと、由紀恵はせっせと朝ごはんの準備をしはじめた。


「あっ、ねぇ、お母さん」

「なぁに?」


花音が思い出したように名前を呼ぶと
冷蔵庫から卵を取り出しながら、由紀恵が振り返った。


さっき聞こうと思ったこと……


「お母さん、はるかくんって知ってる?」