『わかった!いつ引越し?』
『来月の中旬かな。知り合いってのは父さんの友達の子どもさんがね、1人暮らしをしてるんだ。そこに行ってもらうから。』
『了解です!あ、学校は転校しなくていいんだよね?』
『もちろん!』
『だったらよかったあ!』
そんなこんなですぐに来月になった。
お父さんとお母さんはあたしを心配しながらもドイツへ旅立った。
そして、あたしはあるマンションの前に立つ。
き、緊張するよ。
ピンポーン。
インターホンを鳴らす。
すると....
『どなたですか?』
男の人の声が聞こえた。
『さ、ささきくるみです!』
かんじゃったよ....
すると、扉があいた。
201号室。
ここがあたしの住む家。
『ふぅ~。』
深呼吸してからもう一度インターホン鳴らした。
『入って。』
そう言って家から出てきたのは....
『の、野沢くん?!』
あの、野沢想太くんだった....
戸惑いながらもゆっくりと部屋に入っていくあたし。
........気まずい。
『とりあえず、座って?』
『あ、うん....』
野沢くんは台所に行くと紅茶を淹れてきてくれた。
『どうぞ。』
『あ、ありがとう。』
ごくん。
一口飲む。
........
沈黙が続く。
たえきれなくなってあたしはやっと話しかけてみた。
『あ、あの!』
『....ん?』
今の『ん?』めっちゃかっこいい!!!
あ、それどころじゃない!
『あたし本当にここに住んでいいのかな....?』
『....いいも何も親父たちが勝手に決めたんだからどうしようもなくね?それに、笹木、住む場所ないんでしょ?』
『....うん....』
『なら、仕方ないっしょ。』
『なんかごめんね....』
あ、ちょっと涙でそう....
迷惑って思われちゃったかなあ....
そう思って野沢くんの方を見ると何故か真っ赤な顔をしてた。
『の、のざわくん....?顔、真っ赤だよ....?』
すると野沢くんは
『ち、ちげえよ!ちょっと風呂入ってくる。』
真っ赤な顔のままリビングを出て行った。
先週、親父から突然、電話がきた。
『お前の家に、女の子が同居することになったから。』
『は?何言ってんだよ?!』
焦る俺。
『俺の親友の子どもさんでな、その親友が今度、ドイツに転勤することになったんだよ!だから、その娘さんだけうちがお預かりすることになったんだよ!だから、お前、一人暮らしだし、ちょうどいいと思って。』
『いや、よくねぇよ!!!』
『あ、ちなみにその子、お前と同じ学校だから。』
あっさりと俺の言葉をスルーする親父。
『....名前は?』
『笹木胡桃ちゃん!!!』
その親父が言った名前に俺は動きが止まった。
....笹木胡桃?
ってあの笹木胡桃?!
笹木胡桃は最近、男子に人気がある女子だ。
天然でほんわかしてる雰囲気が良いらしい。
実は、俺もちょっと気になっている。
しかし、俺は彼女と話したことがない。
そんな矢先のこの話。
正直、戸惑ったけど、嬉しくもあったのが本音。
親父に話を聞いてからすぐにその日はやってきた。
俺は緊張してた。
そして、あいつに完全に惚れてしまった。