『いてっ!』

『くるみー!って何こけてんの!』


何もないところでこけている少女、笹木胡桃。

あたしです....

『もー!ほら、おいで』

そんな私に呆れながらも手を差しのべてくれるのは幼なじみで親友の山岡璃子[ヤマオカリコ]ちゃん。

同じ年だけど、璃子ちゃんはお姉ちゃんみたいです。

『璃子ー!あれ、胡桃またこけてんの?』
笑いながら言ってくるのはあたし達の幼なじみで璃子ちゃんの彼氏でもある、岩田直哉[イワタナオヤ]。


あたし達は家が近所で親同士が仲が良く、昔からよく一緒に遊んできた。

璃子ちゃんと直哉が付き合ったのは中学2年のとき。

最初は正直、戸惑った。

大好きな2人が付き合ってくれたのはすごく嬉しいんだけど、あたしの存在が邪魔なんじゃないか?って考えてた。

だから、いつも3人でいたのにちょこちょこと他のグループの子達のとこにいったりもした。

でも、3人でいる時より全然楽しくなかった。
ある日、委員会が終わって教室に戻ると....

璃子ちゃんと直哉がいた。


『直哉はちょっと外で待ってて。』

『わかった。』




2人きりになった教室。


『胡桃はさ、直哉のことが好き?』


『へ?』



予想外の質問に驚いて変な声が出た。



『あたしは胡桃の気持ち、全然考えてなかった....直哉のこと、好きだからあたし達から離れていったんだよね....?本当にごめんね....』

なんか璃子ちゃん勘違いしてない?

『ち、ちがうよ!!!あたし、そうじなゃないの!!』
『2人が付き合うの、本当に嬉しかったの....でも、あたしが邪魔なんじゃないかって思うと居づらくなって....』

『そんなこと考えてたの?!あんた馬鹿でしょ!』


え?!


『あたし達はずっと一緒だったでしょ!あたしと直哉が付き合ったって胡桃は大事な存在なんだよ?あたし達にとって胡桃は特別な子なんだから!』


『璃子ちゃーーん!!!』


その日は2人で泣きまくった。
まぁ、昔話は置いといて。


あたしには今、好きな人がいる。

『かっこいいよー、野沢くん....』

クールで顔も整ってて勉強も運動もできる野沢想太くん。

そんな彼を女の子たちが放っておくわけもなく。


今日も休み時間には女の子の波が....



『はぁ....あたしじゃ無理か。』

『胡桃!元気出しなさい!あんたは元気だけが取り柄でしょ!』

『うわ、お前さりげなく酷いことゆってるぞ。』

『璃子ちゃん~!』

『冗談よ。まぁ、でも胡桃には元気がないと!』

『....そうだよね!あたし、頑張るから!』

『そうだぞ~、頑張れ胡桃!』

そんなある日。

父親の一言であたしの運命が変わる。


『父さんたち、ドイツに行くことになったんだ。』


『へ?!』

『だから、胡桃には選んで欲しいんだ。ここに残るか、あっちに着いてくるか。』

『あたしは....ここに残りたい....』

『だと思ったよ。でもな、どちらにしろこの家には住めないんだ。ここ、人に貸すことになっちゃったからさ。それにこんな広い家に胡桃1人残すわけにもいかないし。』

『そっか....』

『だから、胡桃には父さんの知り合いの家に住んでもらう。』