シュートした後相手選手と激しく激突したサイモンは、そのまま地面に叩きつけられた。

36000の大観衆が一気に静まり返った。

サイモンは苦痛に顔をゆがめ起き上がることができず、結局タンカで運ばれ交代を余儀なくされた。

試合はそのまま1対0でトッテナムは敗れてしまった。


サイモンはすぐに病院に運ばれた。

診断の結果はあまりに非情なものだった。

右膝にある4本の靭帯のうち2本を完全断裂していた。

5時間にも及ぶ緊急手術が行われた。

翌日の新聞には試合の結果とともに小さく記事が載っていた。


《トッテナム フォワード サイモン・パーカー重傷 今シーズン絶望》


僕はこの記事を信じることができなかった。

信じたくなかった。

三日前、僕に向かって元気に代表入りへの決意を語っていたサイモンが、何故こんな目に遭わなければならないのだろう。

代われるものなら代わってやりたいと本気で思った。

彼の右足は決して黄金の色というわけではなかったが、少なくとも僕にはそこに一筋の光が射しているのがはっきりと見えていたのだ。