「サッカーはロックンロールだ」と初めて会った日、サイモンは僕に言った。「ボールを持ったら考えている暇なんてない。ドリブルするのかパスかそれともシュートか瞬時に自分のやりたいことを判断しその想い、魂の叫びをボールに込め解き放つんだ」
 
サイモンのその言葉通り彼のプレイにはまったく迷いがなかった。

もちろん、それでうまくいくときもあればいかないときもあった。

だが彼のそんなプレイは、次第に監督の信頼を掴んでいった。

最初は後半残り5分や10分しか試合に出場できなかったのが、徐々に出場する時間が増えていき、リーグ終盤戦にはスタメンにも名を連ねるようになり見事プレミア初ゴールも記録した。

その試合、僕は運良くスタンドから観戦することができサイモンが得点を決めたときは自分のことのように喜んだ。

その日僕たちはパブで祝杯を挙げた。


「おめでとう、サイモン」


「ああ、ありがとう。でもこれはほんの始まりなんだ」と彼は言った。「これからゴールを量産して近いうちに必ず代表入りしてやる。今のフォワードはみんなもう年さ。世代交代の時期なんだ。俺たちのような若い血が必要なんだよ」
 

サイモンはとても饒舌だった。

僕はサイモンの代表に対する熱き想いをつまみにグラスを口に運んだ。

その後僕たちはナイト・クラブに移動し再び酒を煽り、踊り、女の子に声を掛け朝まで楽しんだ。