どれくらい時間がたっただろうか。おえつのまじった泣き声が止んで、澄んだ声が公園と俺の心に響いた。


「うん……待ってるよ、ずっと待ってるよ」

「今すぐ返事やれなくて、悪かったな」

「ううん、平気だよ。ゆうちゃんが待ってろって言うなら、私はずっとずっと待ってるんだよ」


鼻声の、そしてしおらしい歩がとても可愛いくてしかたがない。ドキドキがとまらない……


「歩も俺の言葉なんかよく信じるよな」


まったくだ、そもそもなんで俺なんか好きなのかも疑問なくらいだ。


「今、名前で呼んだ」


予想外の返答にあほな声をだしてしまう。


「へ?」

「いつも“お前”とか“コイツ”なのに、“歩”って呼んでくれた」

そうだっけか?
意識してないのでわからない。


「私はそれだけで嬉しいな、だからゆうちゃん信じるよ」


それだけ嬉しいんだろうか。


「そうか、ありがとう」

「ありがとうは、私のセリフ!」


この、のろけた会話が新鮮でこそばゆい。


「ありがとう、ゆうちゃん…………大好きだよ」

「おう」


この時から、俺の青春が始まったのかもしれない。
青春がなんなのか、それは人それぞれ考え方があるだろう。

でも、俺の物語にはこれから起こること全てが青春なんだと告げているような気がした。

今この瞬間は、まだプロローグにしかすぎない。





本当の物語はこれからだ。