「絶対に違うから」
「なにが?」
母さんの笑みが恐ろしくてたまらないうえに、とぼけてるようにしかみえない実が危険だ。
「ちゃんとわかってますよ」
母は言う。なぜか全てを理解してるような目で。
あんたはマリア様ですか。
「お母さんも女ですから、ね? 実ちゃん」
「へへへ、そうだね」
いつのまにか仲良くなっている。だが、この二人がこんなに近くで笑っていられるのは、俺が大きな秘密を守っているからなんだ。
二人が親しくなればなるほど、俺は辛くなってしまう……
「ゆう? お腹いっぱい?」
「うん、ごちそうさま」
「僕が食べちゃお」
「実ちゃんは小さいのによく食べるわね」
この会話が本当の家族ならば、実に微笑まし事だろう。いつまでもこんな秘密の関係を続けるのは無理だ。
悲しい現実で涙する母を、俺はみたくなんかない。
「おい、実」
「どしたの? おに……じゃなくて、ゆう君」
「それ食ったら、部屋きてくれ」
「ほぁーい」
食いながら返事をするな。