「よし、さくらんぼ、 あっちいこうぜ!」
幼い俺のちっこい手は、それよりももっと小さい手を握りしめて、走った。
「うにゅ!?」
――見事にコケた。
だが実は、泣かなかった。俺よりも小さい体をしているが、ずっと強い心を持っているようだ。
「大丈夫だよ………お兄ちゃん」
「そっか、たてるか?」
こくりと頷いて、二人で遊びに行った。
この時夏休みで、実とは毎日のように遊んだ。
歩に実の事を秘密にしていたのは、正解だっただろう。幼い自分の危機管理能力がフルで覚醒していたに違いない。
実と俺は、いろんなとこで沢山遊んだ。日が暮れても遊んでいた………
そんな思い出は今でも忘れられない大切な時間だった。
学校嫌いで不良なんて言われても、誰かと居る楽しさを忘れないように支えてくれたのは『さくらんぼ』なんだ。
彼女は、夏休みが終わるとスグにアメリカに行ってしまった。当時の俺はアメリカがどこにあるのか知らなくて、電車で会いに行けるものと思っていた。
だから俺は、彼女の見送りの時、彼女が泣いていた理由を知らなっかった。だから俺はこういって彼女をからかった。
「泣き虫だな、さくらんぼは」
でも、大粒の涙はどんどん溢れていった。
「にゅ……だってぇ」
コケても泣かない彼女の涙に、当時の俺は面食らってしまった。
だから、あんなとんでもない約束しちまったんだ……