---ポン。
「実習生…、永谷からホームラン打ちやがった。」
周りが騒ぐのを見て、確信した。
……あんな奴にホームラン打たれたのか、オレは…?
「さあ、早くバッターボックスに入りなよ。次勝ったらあたしの勝ちだね」
いつの間にかマウンドに来ていた結城苓那は、オレの手からボールを奪った。
女に…ホームランを……打たれた。
頭の中にそればかり循環する。
神風とか勝負とか、関係ない。オレの自信が一気に崩れた気がした。
「…もういいです。」
「え?」
「神風と話をして来ます。この勝負もうやらなくていいです」
そしてグラブから手を外し、そのままマウンドを降りて部室へと向かった。