(四)


『静かな場所に行きたい』


そう言ったのはフィーリアだった。


医療班にかつぎ込まれたジャラシーを見届け、勝者の名を盛大に名乗られたあとに俺たちは控え室へと続く廊下でフィーリアと対面していた。


「もう帰るんだよな」


「ええ、いつでも行けるわ。でもその前に坊やとラグナレクにお礼がしたいの」


言って、フィーリアは指を立ててピアノのタイプみたく跳ねさせた。


指先には二輪の白い花。蓮みたいな花が咲き誇り、それぞれ俺とラグナの前へふよふよと移動する。


潰れないように手のひらに置く俺と、浮いたままの花を見るラグナ。


「願いが叶う花です、小さいものだけど、きっと優しいあなたたちの願いを叶えてくれるはずだから。

願って、真っ先に思いついたことを」