「ごしごし」


クリアが持っていたハンカチで拭いてくれた。



マジ、びびった。


いきなりだ。
いきなり、俺との距離をつめて柔らかい女の子らしい指が俺の頬にあたり、石鹸の匂いがするハンカチで優しく顔中を拭かれる。


間近にある女の子の顔。目が合ったときよりも、明らかに心臓と脳が活性化する。


クリアがやっと離れたときだった――俺が、息を吐けたのは。


ドキドキした感は残っていて、ハンカチをたたむクリアから目が離せず。



「洗って返してね」



クリアから渡されたハンカチを握り潰した。



なにっ、このオチっ。


どこまでも期待させて、期待を裏切り、傷ほじくり返す悪行にも近い。